秋には大一番のブリーダーズCが控えているアメリカ競馬界。古馬戦線はそろそろ佳境に入っているといえるでしょう。その代表格とも言うべきレース、パシフィッククラシックSの開催が間もなく近づいてきました。
パシフィッククラシックの概要
タイトル | パシフィッククラシック |
---|---|
格付 | G1 |
開催国(競馬場) | デルマー競馬場 |
性齢 | 3歳以上 |
コース | 2,000m(ダ) |
賞金 | 総賞金100万$ |
パシフィッククラシックSはアメリカのデルマー競馬場のダートコース10ハロン(約2000m)で開催。ブリーダーズCへの前哨戦として見られる向きもありますが、アメリカ西海岸の中では格式高いレースで、中でも最近ではドバイ遠征から帰ってきた馬がここを復帰緒戦に選んで秋のビッグレースに向かうケースが増加。日本でいうところの札幌記念に近い性格を持っているレースと言えるでしょう。
西海岸最大のレースと言われているわりに、パシフィッククラシックSが創設されたのは1991年と意外と最近。ブリーダーズC(1984年創設)のステップレースと見られる理由としてこうした路線整備の影響もありますが、その一方でデルマー競馬場のキャラの薄さも要因になっているように思われます。
パシフィッククラシックの歴史
デルマー競馬場と言えば1937年に創設。アメリカ史上最高の名馬の1頭、シービスケットの馬主としても知られるチャールズ・スチュワート・ハワードが取締役の1人に名を連ね、華々しくデビュー。創設の翌年にはシービスケットがここでマッチレースを行い、全米初となるラジオの競馬中継が行われたことは映画「シービスケット」内でも大きく語られたように、当時はアメリカを代表する競馬場のひとつとして考えられていました。
しかし、太平洋戦争が行われたことで1942年から2年間も閉鎖されると、その様子はやや様変わり。暑い時期にしか開催しない上、ビッグレースはピングクロスビーハンデ(1946年創設)くらいなもの。このレースも2004年になってようやくG1に昇格したようにさほど重要視されていないレースでもありました。
デルマー競馬場が夏のローカル開催競馬場というイメージを払しょくしたのは1990年に入ってから。それまで古ぼけていた場内を大幅に改修することで一気にオシャレな競馬場の仲間入り。さらに1991年には1着賞金100万ドルという破格の条件を設けたレースを創設しようということでパシフィッククラシックSが開催されるようになりました。
デルマー競馬場の運命を変えたとも言うべきパシフィッククラシックSですが、アメリカのホースマンたちの反応は「所詮は夏のローカル競馬場の重賞レース」と冷ややかなもの。そのため、西海岸を拠点にする馬たちばかりが集まるケースがほとんどでしたが、このレースが世界中の話題になったのは1996年のことでした。
この年のトピックはドバイWCを制し、16連勝を飾っていた名馬シガーがドバイ遠征からの復帰緒戦としてこのレースを選択したこと。近代競馬では新記録となる17連勝をかけて臨みましたが、デアアンドゴーに押し切られてしまいまさかの2着に。シガーの連勝が途絶えたレースとしてアメリカどころか世界中の競馬ファンにパシフィッククラシックSの名が知れ渡るようになりました。
やや残念な名前の知れ渡り方をしたレースではありますが、その後はプレザントリーパーフェクトやカリフォルニアクロームなどの名馬がここを制してブリーダーズCに進むなどして、そのキャラクターも次第に固まってきた印象があります。最近ではここを始動戦にする名馬が多いことで、注目度を増している印象さえあります。
パシフィッククラシックの最新ブックメーカーオッズ
パシフィッククラシックのオッズが発表されている、ブックメーカーの一覧になります。
bet365
スポーツベットアイオー
ウィリアムヒル
1Xbet
パシフィッククラシックの見どころ
ブックメーカーのオッズで上位人気が予想されるのは、フライトライン、カントリーグラマー、ロイヤルシップの3頭です。いずれもレーティング上位の強豪馬たちです。
例によって一頭ずつ紹介していきます。まずはフライトラインから紹介します。タピット産駒の4歳牡馬で、これまで4戦4勝の無敗馬です。ブックメーカーのオッズでは、この秋に開催されるブリーダーズカップクラシック(GⅠ)でも1番人気に支持されていることから、この馬の注目度の高さが伺えます。この馬はデビューが遅く、3歳のクラシック路線とは縁がありませんでした。ただし、デビュー戦から3戦目までは連続して2着馬に10馬身以上の差をつける圧勝で連勝を飾りました。未勝利戦や条件戦では稀に大差での勝利といったシーンはありますが、3戦目はGⅠのマリブステークスですから、その結果には多くのファンが仰天しました。そして4戦目のメトロポリタンハンデ(GⅠ)でも圧勝が期待されましたが、スタートで出遅れます。これまでは持ち前のスピードの違いから、楽にハナを奪い、そのまま圧勝するということで勝ち進んできた馬だったので、2番手からレースを進めることになったことについて、多くのファンが不安に感じたことでしょうが、道中で先頭を奪うと、これまでのレース同様、後続に差をつける一方で、結果的に6馬身差での圧勝となりました。先手を取れず、リズムを崩すことも想定されましたが、上手くリカバーしての勝利ですから、この馬の強みが一つ増えたという印象です。かなり強そうなのは自明なのですが、不安な要素として、距離が挙げられます。今回のレースは2,000mで行われますが、これまでこの馬がレースで走った最長距離は前走の1,600mです。今回、一気の距離延長になりますから、やはりこれまで同様の強さが見せられるかが見どころとなります。ブリーダーズカップクラシックが楽しみになるようなレースを見せてほしいところです。
次に、カントリーグラマーを紹介します。5歳牡馬で、これまでの実績として、今年のドバイワールドカップ(GⅠ)をでL.デットーリ騎手とのコンビで優勝しています。さらにその前走の世界最高賞金レースのサウジカップ(GⅠ)でも2着に入る活躍を見せました。この馬はデビュー直後こそはデビュー戦も含めて馬券外に敗れることも度々ありましたが、昨年2021年には本格化したか、そこから出走した全てのレースで2着内に入る安定感を見せています。その中には先述のドバイワールドカップ以外にも、ハリウッドゴールドカップ(GⅠ)での勝利も含まれています。サウジアラビア、ドバイで世界の一流馬を相手に大健闘したこの馬ですから、このレースでも相手は非常に強いですが、優勝するだけのポテンシャルを秘めた馬です。
最後に、ロイヤルシップを紹介します。なんとこの馬、ブラジル産馬で、ブラジルである程度活躍した後に、アメリカを本拠地として活躍しています。GⅠ勝利こそないものの、前走、今回と同じくデルマー競馬場で行われたサンディエゴハンデでは伏兵という位置付けでしたが、見事に勝利を挙げて、有力馬の一頭としてここに乗り込んできました。前走でアメリカ重賞を初めて勝利した勢いが続けば、ここでも十分に勝利が期待できる一頭です。
パシフィッククラシックは2022年9月3日にアメリカのデルマー競馬場で開催されます。このレースは、現在のダート路線の世界のトップクラスの馬が複数出走する注目の一戦となっています。このレースは、秋の大一番であるブリーダーズカップクラシックへも通ずる大事な一戦ですから、是非馬券を買ってレースを楽しみましょう。